カホンの打面固定に鬼目ナットが必要な場合、必要ない場合

カホンの枠材と打面を固定する際に、気になるのが「ネジ・ビス」にするか「ボルト」にするかという問題です。

打面の調整を繰り返す方や、打面自体をよく交換される方は打面の取付穴の強度が気になるところですよね。

 

ネジ・ビスの場合はそれ自身がそのまま側板に埋まりますので、側板とビスで保持する形になります。

ゆえに、材料自体がネジ・ビスの耐性が弱いとすぐにネジ穴がグズグズに崩れ保持力が弱まります。

 

それに対して、ボルトを使うパターンだと側板に「鬼目ナット」というパーツを取りつける必要があります。

鬼目ナットを取りつけてしまえば、以降何度ビスを付け外ししてもネジ穴がつぶれることはありません。

ただし、加工が少々大変です。

 

今回は、カホンの打面固定に鬼目ナットが必要な場合、必要ない場合について解説させていただきます。

あなたの自作カホンの打面取りつけの参考になれば幸いです。

 

鬼目ナットについて

まず、鬼目ナットとはなんぞや?とお思いの方もいらっしゃると思うので少しだけ説明をさせていただきます。

鬼目ナットとは簡単に説明すると「ナットを材料に打ち込める」ものです。

材料に直接ナットを埋め込むことが出来るんです。

 

わかりやすく説明すると、カラーボックスの棚受けのダボをつける時に受け側についている金属を思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれません。

ハンマーで打ち込むタイプと、ねじ込んで入れるタイプの2種類があります。

カホンの側板にこれを打ち込み、打面取りつけをビスの代わりにボルトを使うことで、何度打面を取り外し付け替えても、ネジ穴が弱ることは無くなります。

 

鬼目ナットが必要な場合、必要ない場合

鬼目ナットを入れた方が良い場合、必要ない場合ですが、これはずばり打面をいじる頻度と使用する側板の素材によります。

どういうことなのか、1つずつ説明させていただきますね。

打面をいじる頻度

打面をいじる頻度とは、打面を付け替える回数が多かったり、打面の浮き具合を打面上のねじを調整することで変更することが多かったりすることを指します。

曲やスタイルに合わせてよく打面をいじる方は鬼目ナットを入れた方がよいです。

逆に、一度決めたらあまり調整しない方は鬼目ナットは必要ないです。
打面上の調整だけとかであれば、側板の素材によっては全く必要ないと思います。

なぜなら、ネジ穴をつぶす可能性が低いからです。

鬼目ナットはネジ穴を潰さないためにありますので、そもそもいじらない人には必要ないといえます。

 

側板の素材

打面を固定している側板の素材によっては鬼目ナットを入れた方が安心というものがあります。

ねじを締めると、そのネジ穴がどんどんボロボロと崩れていってしまうような材料をカホンの素材としている場合です。

具体的には、MDFやプライ数の少ない合板等がそれにあたります。やってもらえばわかりますが、何度もネジを締めたり外したりを繰り返すと徐々にネジ穴が崩壊していくのが分かると思います。

特に、電動ドリルやインパクトドライバーなど強い回転力でネジを締めてしまった場合にネジ穴を崩してしまいがちです。

ただし、打面をいじる頻度が少なければ鬼目ナットは必要ありません

なぜなら、一度決めたらそこから動かさないからです。
ネジをいじらなければ勝手にネジ穴がつぶれていく事はないからですね。

 

以上2点が鬼目ナットが必要な場合、必要ない場合でした。

 

実は、あいはらの木で行っているカホン作りワークショップの第1回目は、「鬼目ナット+低頭ボルト」を使ったものだったのです。

しかしながら、第2回目からはこれを廃止させていただきました。

 

ワークショップで鬼目ナットが必要ないと感じ、廃止した理由

その理由は以下の3つです。

作業時間が圧倒的に増える

1つ目は作業時間の増加です。
第1回目は何も分からなかったため時間を読むことが出来ず、13時から開始したカホンづくりで最初に完成された方が19時を超えてしまいました。

というのも鬼目ナットの加工はとても時間がかかるからです。

鬼目ナットの加工は、

打面に穴を開け→
その穴に合わせて取り付け場所のセンターにマーキング→
キリで下穴を開ける→
太めのドリルで穴開け→
鬼目ナット取り付け→
打面をボルトで固定

という工程を踏まねばならず、ただビスを取り付けるのに対してかなりの作業時間がかかってしまいました。

圧倒的な作業時間の増大が1つ目の理由です。

 

失敗される方が非常に多かった

2つ目は失敗される方が非常に多かった事です。

打面に穴を開け、その穴に合わせて取り付け場所のセンターにマーキング、キリで下穴を開けて太めのドリルで穴開けの加工をする際に、このドリルの加工が真っすぐ開けられない方が非常に多く、(というか手工具では無理に近い)いくら治具を用意しても微妙に曲がるんですよね。

すると、それに付随して鬼目ナット取り付け時後、打面をビスで固定する際に打面穴とナットの穴位置のズレが発生する方がかなり多かったんです。

あとは、鬼目ナットの打ち込みが不完全で打面を叩く際に金属に当たる「イヤな鈍い音」が出てしまい、打面を一度外して打ち直しという方も数名おられました。

失敗される方が非常に多かったのが2つ目の理由です。

使っている材料がシナ共芯だから

3つ目は、使っている材料がビスの効きが良い「シナ共芯合板」だから、そこまで鬼目ナットの必要性を感じないと思ったからです。

木は、素材によって釘やビスの効き具合が変わってきます。

材木屋ならではの材木情報になってしまうのですが、30㎜×40㎜の垂木(たるき)と呼ばれる建築材料では「赤松」という樹種が好まれます。なぜなら釘の効きがとても良いからです。

もちろん、日本の木の「杉」でも30㎜×40㎜の垂木材は存在します。しかし赤松と比べて保持力が弱いため釘がスッポ抜けやすいのです。 ゆえに大工さんは杉で同じものがあり、なおかつ杉の方が値段が安いにも関わらず「赤松」を使うのです。

これが「適材適所」というやつですね。

 

これと同じことがカホンの側板でもいえるのです。

あいはらの木で使用しているシナ共芯合板は15㎜でありながら9PLY(9枚の単板を重ねているもの)という非常に密度のある材料です。
ゆえに、他素材と比べてビスの効きが良く、数回打面交換したぐらいではネジ穴はグズグズになりません。

もし、これがMDFやラワン芯の合板、針葉樹合板などを使っていたとしたら鬼目ナットは必要かと思います。なぜならPLY数が少ない為に、打面交換を繰り返すうちにねじ穴がガバガバになってしまうからですね。

ちなみに、色々試した中で一番打面交換に適していないのはMDFです。打面交換2回目には早くもネジ穴部がグズグズになってしまい、保持力がかなり怪しい感じになりました。

3つ目は「シナ共芯合板」をつかっているからという理由になります。

以上3点が鬼目ナットを廃止させていただいた理由です。

シナ共芯合板という材料自体、耐久力が他の素材に比べて強いので、特に必要性を感じないなと思うところです。私が初期に作ったものも、何度か打面交換をしていますがいまだに全然大丈夫です。

 

まとめ

この記事では、鬼目ナットの必要な場合と必要ない場合について解説させていただきました。

打面をよく交換したり、打面の調整を繰り返すことが多いであれば鬼目ナットにする価値は十分にあります。特に側板が密度のある材料でない場合は非常に効果的だといえます。

しかしながら、加工の難易度が若干高いのも問題といえます。

最初からシナ共芯を使うなど材料にこだわりさえすれば、特に鬼目ナットは必要ないのではないかなというのが私の個人的な意見です。

なぜなら、初期に作ったもので何度も打面交換をしているものでも穴はぐずぐずになっていないからです。

もちろん、調整をそんなにされない方であれば素材が何であれ全く気にする必要はありませんよ!

 

オススメの鬼目ナットやネジの径、長さ、加工方法などは別記事で紹介させていただきますね。

あなたの自作カホンづくりの参考になれば幸いでございます。

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